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情暈鏡
ジョウニ・ボカス・カガミ
広東語で朗読したオリジナルテキストのプレイリスト
古文で朗読したのプレイリスト
【目次】
【序文】
原文
生涯中、情愫如雲。白雪秋葉與否、悲惻榮華相配色。作廿一絶句者、落葉所窺、霞光萬道、心提以目也。留筆之深墨內、為啓示之愁思。祈請看官、思忖拙集。此書而已、鄙人不宣。
古文訳
生涯の中は、雲の如き情愫なり。白雪や秋葉にて、悲惻や榮華相配色したり。廿一絶句は、落葉窺ふ所、光の霞む萬道を、心目以て提すに作成しつ。筆の留まるの深き墨の內にて、啓示の為め愁かる思ふなれば。看官よ、祈り請からば、拙き集を思忖らずか。此の書のみにて、鄙人が不宣。
現代文訳
人生の中では、雪景色でも、紅葉でも、悲しみと美しさは混在しています。これらの絶句漢詩には、落ち葉の間から射し込む陽光の眞髄が描かれています。筆跡のすすけた黒い墨に染み込んでいるのは、啓示への深い憧れです。読者から読者へ、詩について考えてみましょう。
原文の広東語読み
古文の現代発音読み
イシュ・チユウラン
一首【沖蘭】
原文
速係風塵力望山、
葱蘢切旭想香蘭、
沖沖頂上離離浪、
亮一觀華對曼檀。
古文訳
風塵に速く係がらむ山を力み望むは、
葱蘢が旭を切れり、香蘭を想ふ、
頂に沖々上がりたり、浪は離れ離れなり、
一觀の華やかに亮らかなり、曼く檀に對き合ふ。
現代文訳
【風に揺れる蘭の花】
突風に吹かれ舞い上がるちりに視界を阻まれるも、山を仰ぎ見る。青々緑豊かなものが日の出に映える。芳香は蘭を想わせる。天まで押し寄せ砕ける波は、遠くなり密になる。青々とした山の頂から光が差す。伸びた影の白檀の木に向かう。
原文の広東語読み
古文の現代発音読み
ニシュ・ユメノヤド
二首【夢宿】
原文
千甜五味為常喜、
萬夢不成宿永眠、
日日于天心想發、
椿高下土滿甘蓮。
古文訳
五味の千甜き物は、常つ喜び為りぬ、
不成の萬夢は、永眠に宿りたり、
日々天も于に、心の想ひ發きつ、
椿は下土の甘蓮にて滿ちるに高める。
現代文訳
【夢の豪邸】
千もの種類の美味な香りは、長く続く喜びを生む。無数の夢は実現せず、永遠の眠りの中に留まる。日に日に空には過ぎ行く想いが浮かび上がる。香椿は謙虚な土一面に咲き誇る甘い蓮の花に敬意を表する。
原文の広東語読み
古文の現代発音読み
サンシュ・メイセウ
三首【明照】
原文
刺鏡開容拒翳欲、
波揚赤錦等雙簪、
洋洋照細平生易、
烈骨明霓視玉嵌。
古文訳
鏡を刺さりたり、容を開くにて、欲を拒む翳れ、
揚る赤き錦を波なら、雙簪を等なら、
細かき事を洋々たる照りたり、平生は易なら、
烈骨が霓を明かせ、玉嵌に視らふ。
現代文訳
【洞察を照らす】
鏡を通してさらけ出された彼女の鋭い視線は、欲望を曖昧にする。真紅の錦に目をやる。お揃いのかんざしを比べる。詳細の中で無限にさすらい、安らかに人生を送る。骨から発せられる燃えるような感情が虹を現し、翡翠の象嵌のようである。
原文の広東語読み
古文の現代発音読み
ヨンシュ・ハルサメ
四首【春雨】
原文
疏觀缺緩化青春、
暖雨萌苗步兩輪、
落落雲林吟詠句、
飛言像靈急行湍。
古文訳
疏る觀は緩やかなるの缺けど、青春を化へれ、
暖かき雨は苗萌み、兩輪を步み、
雲林を落々なれ、句を吟詠しかり、
飛言は靈の像なり、急なる行湍に。
現代文訳
【春の雨】
鋭い洞察は軽快さを欠くが、青春の視点を変えた。心地よい暖かい雨は苗を芽吹かせる。ぐるぐると2回歩き回った。霧がかかった森は視界から遠ざかり、リズムにのって一節を詠う、飛び交う言葉は精霊に似ている。儚い激流のように。
原文の広東語読み
古文の現代発音読み
ゴシュ・カワノホシ
五首【河星】
原文
徙倚含情居五更、
埋名暗閣向星河、
時時憶舊長天應、
燭耀窮人望愈初。
古文訳
情を徙り倚るに含みたり、五更に居たり、
暗き閣に、星の河向き合ふの、名を埋みたり、
時々舊を憶ひつ、長天が應へり、
燭は愈る初めに望み窮む人を耀かす。
現代文訳
【河の星】
思い患いを飲み込んで、暁にまどろむ。影の深い東屋に名を埋めて、星の降る川のほうへ。時折追憶すると、大きな空が答えてくれる。ろうそくはより良いものの始まりを願い、失意の人々を眩しく照らす。
原文の広東語読み
古文の現代発音読み
ロクシュ・クワノキ
六首【過季】
原文
中流有鯽隨雄鳳、
過季強游舞百歌、
滾滾邊旋河岸歎、
驕奢合葬在鷹窩。
古文訳
流の中に雄鳳にて隨ふ鯽が有り、
季を過ぎにて強き游ぐ、百歌を舞ふ、
滾々邊りに旋りは、河岸が歎く、
驕奢は鷹の窩に在す葬り合ふ。
現代文訳
【季節の移り変わり】
流れの真ん中に勇ましい鳳凰の後を追う黄金の鯉がいる。季節を越え、力強く泳ぐ、百曲のダンス。ぐるぐる回りに回る。川岸がため息をつく。鷹の巣に一緒に埋められ、誇りと富は失われた。
原文の広東語読み
古文の現代発音読み
ナナシュ・コウドク
七首【康獨】
原文
見笑如膠貼重顏、
熙來亂面食三饅、
林林美粉深杯飲、
壽杜康哉起獨山。
古文訳
笑ひにて見るのは、膠貼る重顏の如し、
熙は來れば、面が亂せり、三つ饅を食ぶ、
美る粉は林々に、深き杯にて飲む、
杜康に壽哉せよ、獨り山を起こせば。
現代文訳
【孤独の祝福】
笑われるのは、糊が真剣な顔に貼り付くようなものである。満足は訪れれば、顔がぼやける。まんじゅうを三つ食す。森の木々のような上質な小麦粉の山。深盃で飲む。酒の先祖様に乾杯。あなたは孤独な山を慰める。
原文の広東語読み
古文の現代発音読み
ハシュ・ヒトミノカウ
八首【睛孝】
原文
還親遠及由殘脚、
盡孝逃睛以敝盲、
悄悄無懷方外落、
思歸見感已收行。
古文訳
親に還らむのは、及ばずに遠ざかれば、由に殘なふ脚なり、
敝るゝ盲以て、盡くす孝を睛に逃がしぬ、
懷かりの悄々たり無く、方外に落つ、
歸し思ひたり、感を見れば、已に行を収まらむ。
現代文訳
【光景の親孝行】
両親への恩返しは、不自由な足の私には、手の届かないものだ。恐ろしいほどの盲目で、親孝行は私の視界から遠ざかる。大切なものなくして悲しく沈黙し、私は世界の彼方に落ちていった。何かを感じるために家に帰りたいが、その気持ちは失われ、すでに旅の終着点へ。
原文の広東語読み
古文の現代発音読み
キュウシュ・ヲクノクウ
九首【屋空】
原文
九十年來為影響、
鄉風舊屋已無情、
悠悠悴淚空心憶、
小子違交忘老兄。
古文訳
九十年に來りたり、影と響き為りき、
鄉風は舊屋も、已に情が無し、
悠々たり悴れる淚なれ、空心が憶はむ、
小さき子交じり違ひつに、老兄を忘れぬ。
現代文訳
【家の空虚】
九十歳になり、影とこだまになっていく。見慣れた家も、故郷の天気も、今は情緒もない、衰えと定のないことは嘆きの涙である、空っぽの心が回想していく、小さな子供は見知らぬ人を避け、この老人を忘れてしまう。
原文の広東語読み
古文の現代発音読み
ジュシュ・シンノキヤウ
十首【身響】
原文
鐘樓又響反年經、
破廟安身擬出征、
蕩蕩黃河流浪樂、
沿霄一息望珠明。
古文訳
鐘が樓は又響かせ、年經を反く、
破る廟に安身せむ、出征を擬る、
蕩々たる黃河が流浪するの樂しむ、
一息にて霄に沿へり、珠の明を望む。
現代文訳
【自己の共振】
鐘楼は絶え間なく鳴り響いて、時の流れに逆らう。朽ち果てた寺に立ち退く、案内なしで出発しよう。黄河は流れ続け、漂う波が楽しませてくれる。真珠の光を遠くに眺めながら、太陽の輪の線が誘う下流への休息に向かう。
原文の広東語読み
古文の現代発音読み
ジュウイシュ・インイシ
十一首【陰石】
原文
冷峽前陰分洞穴、
城垣照水曼微風、
油油石髓窮條本、
氣促何如昧澒濛。
古文訳
冷ゆ峽前の陰に洞穴を分かつ、
城垣は水を照らせり、微風を曼く、
油々たる石髓が本に窮まり條せり、
促る氣は如何せり、澒濛に昧る。
現代文訳
【日陰の岩】
人里離れた峡谷の前の木陰が洞窟を仕切っている、城壁の反射が水面を照らし、遠くまで風の音を響かせる。滑らかで光沢のある鍾乳石が根元まで必死に伸びている、慌ただしく呼吸をしながらも、包み込むような霧の中を通過していく感覚は何だろう。
原文の広東語読み
古文の現代発音読み
ジュウニシュ・ヂンジヤウ
十二首【沈情】
原文
沈酣曜渺奔丹渚、
邂逅同心放宿思、
翊翊懸情歌舞信、
鴛鴦兩孛逆侵施。
古文訳
曜かしき渺かるのは沈み酣すれば、丹渚に奔らむ、
同心し邂逅しきに、宿思を放つ、
懸情を翊々すれば、信に歌舞したり、
鴛鴦は兩孛なり、侵す施に逆らふ。
現代文訳
【沈みゆく感情】
光り輝く大地に酔いしれ、太陽に照らされた海岸を疾走する。気の合う心との偶然の出会い、大切な想いを存分に表現する。不安な気持ちを超えて舞い上がる、誓いの歌にのって踊る。忠実な夫婦は一対の彗星になって、侵略軍の旗に立ち向かう。
原文の広東語読み
古文の現代発音読み
ジュウサンシュ・ノウデン
十三首【農田】
原文
日夕農停退野田、
纁裳被地鎮荒烟、
尋尋索隱相觀距、
切貫投明往遠邊。
古文訳
夕日は農が野田に停まり退きつ、
纁の裳は地に被ひぬ、荒烟を鎮へむ、
隱もるのにて尋々たり索みたり、距を相觀たり、
投明に貫を切りつ、遠かる邊りに往く。
現代文訳
【農家の畑】
休耕田を引き払い、夕暮れ時になると農民は休む。黄昏の赤い袴は地面を包み込む。不毛な夕立の中。隠れた誰かを探し続ける、遠く離れたお互いを想い合う。夜明けに接続を切って、遠い国境地帯に向かう。
原文の広東語読み
古文の現代発音読み
ジュウヨンシュ・テンバウ
十四首【天望】
原文
天涯我歇臻盈牧、
慮望西方想黑澄、
旆旆懷開槐樹語、
從災覺夢看清晶。
古文訳
天涯に我は歇まらむ、盈牧に臻せば、
西方に望慮したり、黑き澄を想はむ、
旆々の懷が槐樹の語りの開きぬ、
夢を災ひし覺ますの從へば、清晶を看ぬ。
現代文訳
【天の希望】
空の岸辺でしばらく休んでいると、豊かな牧草地にたどり着いた。西の楽園を期待して、すすのように黒い静水を想像する。大きな旗のように波打つ大切な思い出が塔の木に応える。夢から渋々覚めるとき、水晶のような透明感で現実の苦悩が見えてくる。
原文の広東語読み
古文の現代発音読み
ジュウゴシュ・センウヲ
十五首【煎魚】
原文
入屋煎魚同己食、
灰爐重響與前忱、
忉忉又慨郊蘆動、
郁醬如生注苦霖。
古文訳
屋に入らむ魚を煎れば、同に己と食べたり、
灰の爐が重なり響きたり、前の忱に與せり、
忉へり忉へるのは、郊の蘆が動きたり又慨かむ、
郁しき醬は、生が苦しき霖を注ぐの如し。
現代文訳
【魚を蒸す】
家に入ろう、魚を調理するために。自分だけを相手にして食べるのだ。灰の暖炉が懐かしい真心を込めて重々しく響く。慰められることのない緑の木立の葦が揺れ動き、また寂しげにため息をつく。再び寂しげな溜息を吐く。ぴりりとした醤は、生命が降り続く苦い雨を降らせるかのようだ。
原文の広東語読み
古文の現代発音読み
ジュウロクシュ・シウエフ
十六首【收葉】
原文
收筵掃葉滅殘燈、
悟窅冥雲舉蔓藤、
靄靄斑朧康泰夜、
英熏萬物減多疼。
古文訳
筵を收まれり、葉を掃けり、殘る燈を滅ぼさむ、
蔓藤を舉げる窅冥の雲を悟りぬ、
朧に斑の靄々は、康泰の夜なり、
英が萬物を熏べれり、多き疼みを減しぬ。
現代文訳
【葉の収穫】
簀の子を片付け、落ち葉を掃き、薄暗い提灯を消そう、忍び寄る蔓を持ち上げる謎めいた雲に気付いた。かすかな月明かりの中、まだらの雲の切れ端の下、健康で平和な夜だ。花は空の下、すべてを曇らせ、あらゆる痛みを和らげる。
原文の広東語読み
古文の現代発音読み
ジュウナナシュ・マサルウマ
十七首【勝馬】
原文
驟外康驪超遠域、
全天馬賞傍威元、
騤騤共鼓熙車湧、
特俠衝中勝大宛。
古文訳
外に驟る康の驪が遠域を超へれり、
全ぶ天馬が賞めるのは威元に傍ふ、
騤む騤む鼓の共に、熙る車が湧けり、
衝の中に特俠しつ、大宛を勝れる。
現代文訳
【勝ち誇る馬】
元気いっぱいの真っ黒な馬がが勢いよく駆け出し、遠い国境地帯をを越えていく。すべての天馬、そして馬の堂々たる起源と比べても、この馬は勝者である。轟く太鼓とともに、栄光の戦車は躍進する。フェルガナの伝説の馬さえも凌駕し、攻撃される中、極限まで勇敢に戦った。
原文の広東語読み
古文の現代発音読み
ジュウハシュ・アガルノソラ
十八首【登霄】
原文
登霄上震光天下、
極目不名禱灼昕、
灌灌常平同信懇、
涓泉爁焱屬祈神。
古文訳
霄の上を登がるのは、光の天下にも震るひつ、
目の極が禱る灼昕を名づかず、
常平は灌々にて、信の同に懇ろなり、
涓かなる泉は爁の焱も、神に祈るの屬る。
現代文訳
【エンピリアンへの昇天】
最高峰の天を超え、光の世界を圧倒する威厳を持つ存在へ。視覚の限界は、祈祷の灼熱の夜明けを捉えることはできない。永遠の平和が満ち溢れている。信心を持って懇願する。湧き出る泉と燃え盛る炎が歌を呼び起こし、神へ祈りを捧げる。
原文の広東語読み
古文の現代発音読み
ジュウキュウシュ・テイノキ
十九首【帝軒】
原文
慢帝臨軒對嘯飄、
飛幢晦迹赴今宵、
恂恂自下生平翳、
月甲遮身出小苗。
古文訳
慢る帝の臨む軒は、嘯飄に對き合あふ、
飛ぶ幢にて迹を晦なりき、今の宵を赴きたり、
恂々のは下に自らしたり、生平に翳り、
月の甲が身を遮れば、小苗を出づ。
現代文訳
【皇帝の縁側】
尊大な皇帝のベランダは、吹き荒れる強風に直面している。空飛ぶ旗が亡命者としての私の足跡を覆い隠す、私は現在の夜に覆われた淡色の中に身を投じる。控えめて謙虚なのはつつましい自分だ。生まれた時から隠れていた。月光の鱗が私の体を裂くと、その裂け目から小さな芽が元気よく出てくる。
原文の広東語読み
古文の現代発音読み
ニジュウシュ・ヤトユミ
廿首【矢弓】
原文
彎弓閉瀨成清志、
指矢安心射白正、
慥慥修平憂慮走、
真如后羿醉辰形。
古文訳
弓を彎かむ、瀨を閉ぢれば、清き志を成る、
矢に指しつ、心を安らかならば、白む正に射る、
慥々に平を修めば、憂ひや慮りが走りつ、
辰の形に醉へり、真に后羿の如し。
現代文訳
【弓矢】
弓を曲げ、急流を塞ぐ。明確な志を遂げる。頭を矢に傾けて心を鎮め、白い的に向かって矢を放つ、実直で誠実な静寂が培われ、悩みや不安が消え去る、暗闇に輝く天体に酔いしれながら、下界に取り残された孤独な射手のように。
原文の広東語読み
古文の現代発音読み
ニジュウイチシュ・アカツキシヤウ
廿一首【曉生】
原文
曉谷凌空緣舊國、
聲關紫宙決高山、
洸洸士庶劻勷探、
美麗浮生可放潸。
古文訳
曉は谷に空を凌げり、舊國緣なれり、
聲が紫宙を關はれり、高山に決まれり、
洸々なる士庶は、劻てり勷し探せり、
美麗なる浮き生にて、潸を放つ可し。
現代文訳
【夜明けの始まり】
太陽が空高く舞い上がり、慣れ親しんだ国の端をよじ登る。紫色の大空を折り畳む音は高い山肌から離れていく。勇敢で大胆なあらゆる人々が、感情を高ぶらせながら、探し求める。美しく魅惑的な儚い世で、涙を流すことは許される。
原文の広東語読み
古文の現代発音読み